するから、するつて云つたゞけよ。それ以上、別に、なんでもないのよ。
新井  益々わからん、僕にや……。それで、あんたは、先生が死んで、なんともないんですか。さうして、ぢつとしてゐられるんですか。
とね  だから、どうにもしようがないつて、云つてるんぢやないの。わからない人ね。
新井  悲しくも、怖ろしくもないんですか。
とね  そんなこと、あんたが聞いてどうすんの。あたしがどう思つたつて、勝手ぢやないの。
新井  まあ、騙されたと思つて行つてみよう。僕は、心配な時は、心配な顔しかできない人間なんだ。笑はれたつて、かまやしない。(向うへ行きかける)
とね  誰も笑つてやしないわよ。お待ちなさいつたら、ちよつと……。
新井  ……。
とね  今の話は、みんな出鱈目よ。だつて、死にゝ行く人間が、明日の朝、峯の茶屋まで自動車を迎ひに寄越せつていふわけはないでせう。
新井  全くですね。
とね  それから、二葉さんは、二三日うちに、また東京へ出ることになつてるのよ。
新井  ほんとですか。
とね  がつかりしたでせう。
新井  よして下さい、さういふ変な話は……。
とね  あたしも、ことによると
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