して、駅へ行つてくれ。急がんと間に合はんぞ。
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菰原献作(四十五)は、麦藁帽を脱いで頭を下げる。それから、とねの方に近づき、
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献作 そいぢや、車に敷く座蒲団をお貸しなすつて……。
とね 痛いといけないから、二三枚持つてくといゝわ。(奥へはひる)
州太 (時田に)どうです。見事でせう。
時田 見事には見事だが、問題は、湯が出るか出ないかだ。まあ、しかし、希望はもてるね。
州太 希望どころぢやない。これこそ事実といふやつです。(急に思ひ出して)おい、新井、昨日の杭打ちを続けてやれ。道路に添つたところを、みんな片づけろ。三人も連れて行けばいゝだらう。
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新井は、そこにゐる男たちを連れて去る。とねが座蒲団をもつて出て来る。献作、それを受け取る。
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献作 旦那はおいでになりませんか。
州太 そんな暇はない。お前一人で大概わかるだらう。若い娘が、さう幾人もこんなところへ降りる筈がないよ。
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