州太 おとねつていふ女か。(間)お前はなんだと思ふ?
二葉 あたしに云はせるの? ずるいわ……。
州太 おほかた察しがつくだらう。わしは、お前に、なんにも隠さない。(間)その通りだ。
二葉 結婚なさるおつもり?
州太 はじめは、そんなつもりぢやなかつた。今でも、そんなことは考へてない。しかし、お前が勧めるなら、結婚してもいゝ。
[#ここから5字下げ]
長い間。
[#ここで字下げ終わり]
[#ここから改行天付き、折り返して1字下げ]
二葉 それだけのことがわかれば、もういゝのよ。
州太 それだけのことが、どうして知りたかつたんだ?
二葉 さうね、好奇心よ、きつと。
州太 好奇心……? そんな風に誤魔化さなくつてもいゝ。わしは、お前の前で告白をするが、あの女とわしとの関係は、お前たちが想像もつかないやうな、俗つぽい、だらしのない関係だ。あれは小諸で芸者をしてゐた女だ。いろいろ苦労をした揚句、商売を止めたいといふから、わしも今、独り身ではあり、引取つて世話をすることにしたんだ。向うも、男なら、わしと限つたわけでもあるまいし、こつちでも、あれでなけれやならんといふほど、
前へ
次へ
全75ページ中24ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
岸田 国士 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング