んなら、女中ですか。それならそれでかまひませんよ。あたしは、なににでもなります。
州太  だから、事実ありのまゝでいゝぢやないか。
とね  ほんとに、いゝんですか。でも、あんたは、そのことを一番心配してるんぢやありませんか。あたしに隠したつて駄目ですよ。この二三日、そんなら、どうして、あたしに対する態度を、がらつと変へちまつたんです。娘さんの方に気を取られてつて云へばそれまでかも知れないけれど、あたしにや、もつとあんたの深い気持がわかるつもりですよ。
州太  ひがむのはよせ。
とね  いゝえ、ひがみなんかぢやありません。あたしは、たゞ、幾度も云ふやうに、二葉さんに会つて、中途半端な口の利き方をするのがいやですからね。娘なら娘、お嬢さんならお嬢さん、さういふところをはつきりさせたいんです。
州太  その、どつちでもなければ仕方がない。
とね  ぢや、お友達でいゝんですか。それとも姉妹《きようだい》……?
州太  まあ、そんなところさ。
とね  さういふ関係で、二葉さんは承知しますか。
州太  承知するもしないもなからう。
とね  あんたは、それで、どうもないんですね。
州太  どうもない
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