よ。
とね ほんとですね。
州太 うるさいな。
とね 余計な苦労をして、損しちまつた。
州太 何がだい。
とね あんたが、二葉さんに気兼ねだらうと思つてよ。
州太 気兼でなくもないがね。
とね それ御覧なさい。
州太 だからと云つて、今更、お前を女中扱ひにも出来まいぢやないか。
とね うれしいわ。
州太 その代り、しつかり頼むよ。つまらんところで、おれに恥をかゝせないでくれ。
とね どういふところ……?
州太 考へたらわかるだらう。
とね わからない。
州太 娘の眼に、おれが道楽者に見えても困るからな。
とね はつきり云つて頂戴よ。
州太 もう、その話はよせ。おれは今、非常に六ヶ敷い問題を考へてるんだ。子供を裁くのは、なぜ親でなければならんかといふ問題だ。おれは、今、親でありながら、子供になつてみてゐる。さうすると、娘の二葉が、実は、娘のやうな気がしないんだ。丸で母親のやうな気がする。この気持は、ちよつとお前にはわかるまいが、それやしみじみとした、嬉しいとも悲しいともつかん気持だ。もうぢき、あいつが此処へ帰つて来て、われわれ二人を不審らしく見くらべるだら
前へ
次へ
全75ページ中15ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
岸田 国士 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング