ゐるといふこと、それゆゑ、特別な待遇を受けてゐるといふことです。若さに免じて大目に見るといふところもあるでせうが、それよりもやはり、青年に対する世の中の期待の方が大きい。さう考へるのが当り前です。
青年にしてはじめて為し得る行動、青年でなければ易々とはできぬ人生の営みがそこにあるのであります。この時期を逸してはなりません。
もつと具体的に云つてみませう。
青年に対しては、誰も不必要な先入見をもたない。純潔は青年の生命だからです。例へば何処へ出かけて行つて、誰にでも会へる。またどんなことでも云つて、それに一応は耳を傾けさせるといふやうなことがこれです。
青年の欲求には、如何なる場合にも打算がないといふ魅力があります。分別臭さは断じて青年のものではない。右顧左眄は無用、善しと信じて直行すれば、常識ではどうにもならぬ現実が道をひらくのです。
青年のために、すべての学校が門戸をひらいてゐます。個人々々には望みの学校にはひれない事情があらうけれども、それすら、必ずしも不可能とは云へない。つまり、学校教育の施設は、悉くを挙げて、これこそ、専ら青年のために用意されてゐるのであります。
青年は何よりも、その純潔さのゆゑに美しい。肉体的には、皮膚の緊張と弾力ある肢体によつて、精神的には、天真爛漫と想像力と情熱によつて、青年は、その美しさの故に何人からも愛される。青年と青年とは互にその美しさに酔ひ、その美しさによつて結ばれるのです。
青年はまた男子であれば自由に職業を選ぶことができる。今日は戦時下の要求から必ずしもすべての青年がさうだとは云へませんが、それでも、準備と努力次第で、ほゞ自分の欲する道に進めます。少くとも、能力以外に掣肘を受けるものはないのであります。
更に、青年の一番大きい特権は、男子にあつては、国の護りとして、陛下のお召に応じ得る年齢がそこにあるといふこと、女子にあつては、同じく、国の宝を挙ぐべき妙齢と称せられる婚期が、もはや含まれてゐるといふことです。
かういろいろと数へ挙げてはみましたが、要するに、青年の青年たる特別の資格といふやうなものは、結局次の時代を背負ふ勇気と希望とに満ち、伸びる力と溌剌たる美とをおのづから具へた、かの逞しく花やかなすがたであります。
これだけの資格を自然に恵まれてゐるべき筈の青年です。仮りに、一人の青年について、この条件
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