の青年に課せられた宿題は以上の通りです。
真に美しい「夢」のないところにも亦、一種の「憂欝」があつたのであります。
[#7字下げ]七[#「七」は中見出し]
さきに述べた「生理的憂欝」とやゝ区別しがたいものに、かの「青春の悩み」があります。対象の漠とした焦躁、常に満ち足りぬ心の渇き、捉へ難い幻影の模索、自分に微笑みかけるもののない淋しさ、このまゝ無為にして青春を終るのではないかといふ不安、などが、雑然として胸を締めつけるのです。これが、もとを質せば、簡単な「異性への憧れ」に過ぎないといふのが事実なのであります。その証拠に、ひとたび好もしい特定の異性が眼前に現れるや、その焦躁も渇きも模索も不安も、忽然として影を消すこと請合ひであります。
しかし、また、新たな「憂欝」が、時としては、恋愛のきざしと共に芽を吹きます。
相手に十分心の通じない焦躁、常に相手の顔が見えぬ物足りなさ、相手の気持がわかつたやうでまだはつきりわかつたと云ひきれぬ不安、競争者の現れる危惧など。
恋愛心理の解説はもうこれ以上不必要と認めますが、かうなると、恋愛こそは、病であると云はねばなりません。病の徴候として
前へ
次へ
全40ページ中36ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
岸田 国士 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング