、恐るべき悪徳は日常茶飯事の如く、人、相助けることは稀で、創造の悦びを讃へるものは子供しかなく、真理は臭いもののやうに蓋をされ、わづかに美しいものと云へば自然と芸術のみといふやうな世界を、まさかに「現実」とは考へ及ばなかつたのです。
 予め断つておいたとほり、これは極端な「現実」の悪口で、私自身こんな風に信じてゐるわけでもありませんが、比較的純真無垢にして人を信ずること厚く、学校教育によつて善悪、正邪、美醜を判断する眼を与へられ、人生への希望を、そのまゝ夢として、今日の社会に生きようとする年若き人々の魂は、荒々しく埃にまみれた現実の断片から、そもそも如何なる印象を受けるかといふことです。私が前に行つた「現実」の素描は、そのまゝ彼等の魂に映る「現実」のグロテスクな仮面の羅列に過ぎぬと私は確信するものです。
「現実」の様々な面に対する幻滅は、少くとも青年にとつてのみ、憂欝の種となり得るもので、屡々これは「懐疑」といふ穽に通じる道ですが、これまた、現実を深く識り、理想を高く掲げることにより、そこに新しい希望と勇気とが湧くのでありまして、この種の憂欝は、いはゞ、青年の「夢」の発展を画する一時期
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