下げ]二[#「二」は中見出し]
青年の一つの「夢」は、なんと云つても、恋愛と結婚でありませう。
このことについては、他に語る人があると思ひますが、一国の文化といふ見地から、そして、夢と現実の問題にからませて、青年の恋愛と結婚について一言しませう。
とにもかくにも、異性相惹き、相結ぶといふことは人生に掛ける最も普通の、そして、最も興味ある「出来事」であります。古来、多くの詩歌や物語が、繰り返し繰り返しこれを主題として飽きないといふのはそのためであります。
まづ、人間の心理、または行為としてこれをみる時に、恋愛は複雑微妙な変化に富み、濃淡色とりどりの多彩な絵巻物となり、時には波瀾をきはめた劇的情景を繰りひろげるのに反して、結婚は、殆ど常に恋愛の終局と考へられ、或は単に「家を持つ」ための便宜手段であるかの如くみられがちであります。
従つて、恋愛は屡々猥らな情事と混同され、結婚は往々にして事務視されるといふ、甚だ憂ふべき傾向を生じます。
恋愛はある特定の異性のうちに自分の意に適つた「美」を発見し、この「美」を通じて相手のすべてを神聖な目的物として追求すると共に、相手からも同様
前へ
次へ
全40ページ中11ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
岸田 国士 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング