よござんすけど、家《うち》なんかで、あんまりなれ/\しい口の利《き》きやうをなさるものだから、母でさへ怒つてますわ。
妻 で、つまりあなたのお宅へ伺はないやうに、あたしから言つて呉れつて仰つしやるのね。
若い女 えゝ。それと、あたしも当分伺へないからつて、直接ぢや又、うるさうござんすから、これも奥様から……。
妻 やれ/\、大変な役目ね。
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詩人階段の上から半身をあらはし、
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詩人 まだですか。
妻 まだよ。
詩人 鴨《かも》ちやん。いゝかげんに話を切りあげて、こつちへいらつしやい。
妻 そんなとこから顔を出すもんぢやありませんよ。(詩人引込む)
若い女 あたし、あの方の顔を見るのも、なんだかこはくなつて来たわ。
妻 (夫の方に行き)ねえ、貴方《あなた》、お聞きになつて……鴨子さんのお話。
夫 あらまし聞いたよ。
妻 どうしたもんでせう?
夫 相談かい、相談なら規約によつて、御免蒙るよ。
妻 そんな戯談は兎に角として、あたし達がそんなこと言つたら却つて怒りやしないか
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