ですねえ。
妻  半分だつて多過ぎるわ。
詩人  エヘン/\。奥さん早く喰べないと、味噌汁がカスだけになりますよ。
妻  あら、あたしは自分でこさへてたべるからいゝんですよ。
詩人  へえ、僕が折角こさへたのに……。
妻  あなたは御自分のだけになさればいゝんですわ。めい/\勝手に好きなものを喰べればいゝでせう。
詩人  女はどうしてさう、偏狭なのかなあ。

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この時玄関に御免なさいといふ女の声、妻たつて出て行く。
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妻の声  まあ母さんなの。なんだつて、こんなに早く……あら/\、どうして……ちよつとお上んなさいよ。えゝ、今出かけるとこだわ。

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妻が先に立ち、妻の母が入つて来る。
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夫  (坐りなほし)いらつしやい。御無沙汰してゐます。
母  今ごはんですか。朝つぱらからどうも……実はね……。
妻  まあ、お敷きなさい、母さん。
母  お出かけで忙しいんだらうから、あたしには構はないで……お茶なんか
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