ですねえ。
妻 半分だつて多過ぎるわ。
詩人 エヘン/\。奥さん早く喰べないと、味噌汁がカスだけになりますよ。
妻 あら、あたしは自分でこさへてたべるからいゝんですよ。
詩人 へえ、僕が折角こさへたのに……。
妻 あなたは御自分のだけになさればいゝんですわ。めい/\勝手に好きなものを喰べればいゝでせう。
詩人 女はどうしてさう、偏狭なのかなあ。
[#ここから5字下げ]
この時玄関に御免なさいといふ女の声、妻たつて出て行く。
[#ここで字下げ終わり]
[#ここから改行天付き、折り返して1字下げ]
妻の声 まあ母さんなの。なんだつて、こんなに早く……あら/\、どうして……ちよつとお上んなさいよ。えゝ、今出かけるとこだわ。
[#ここから5字下げ]
妻が先に立ち、妻の母が入つて来る。
[#ここで字下げ終わり]
[#ここから改行天付き、折り返して1字下げ]
夫 (坐りなほし)いらつしやい。御無沙汰してゐます。
母 今ごはんですか。朝つぱらからどうも……実はね……。
妻 まあ、お敷きなさい、母さん。
母 お出かけで忙しいんだらうから、あたしには構はないで……お茶なんか
前へ
次へ
全33ページ中16ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
岸田 国士 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング