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第二場

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茶の間には寝床が敷いてあり、妻が夜着にくるまつて寝てゐる。
夫は座敷で洋服を着ながら、足で寝床を隅の方へ押しやり、朝食をする場所をこしらへてゐる。
詩人が台所から湯気のたつた釜をかゝへて来る。夫はシヤツ一枚で、急いで茶の間のチヤブ台をとりに行く。
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夫  やア、どうもすみません。味噌汁の身はもういれてくれましたか。
詩人  いつ買つたんだか、豆腐が半分ばかり戸棚にはひつてましたから、そいつを入れました。
夫  いつんだらう。この前のだとすると、あれやあんたの立つた日ですぜ。もう五日にもなるが、大丈夫かな。(味噌汁の鍋をとりに行く。その間に、詩人は長火鉢に火をうつし、茶わんやはし箱を揃へる)
詩人  時間はいゝですか。(さう言ひながら、また台所へ行く)
夫  (食卓につき)ちよつと、お序《ついで》にしやもじをどうか……。
詩人  (しやもじを持つて来る。妻の寝床を飛び越える拍子に、妻の足をふむ)
妻  あ、痛た。
詩人  御免、失敬。
妻  
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