、僕一人のために、折角あなた方が、非常な期待をもつて実行されつゝある革命的試みを中断させるといふのは甚だ不本意ですから、この際僕の方で譲歩しませう。その代り僕にも一つ、その試みを成功させる上での、適当な役割を振り当てゝ下さい。そこで若し、許していたゞければ、僕がこんな提議をしたいと思ふんです。
夫 どういふことかよく判りませんが、まあ、言つてみて下さい。
詩人 現に、その規約についても、御二人の間に解釈の相違が生じてゐるやうなわけですから、あと三日間、もし一緒に住はれるといふ段になると、いろ/\不便なことが生じて来て、結局どつちからともなく規約を破つてしまふことになると思ふんです。さういふ場合に、僕がそばから公平な判断を下して、一々裁決をするといふことにしたらどうでせう。一方が誤つて規約に触れた場合も、僕が直ぐに注意をするといふわけです。これはうるさいかも知れませんが、一番実績を挙げ得る方法ぢやないかと思ふんです。
妻 あたくしは、さうしていたゞければ、結構だと思ひますわ。でも、お勝手はしたくないときにはしませんよ。
詩人 御心配は要りません。僕が台所は引うけます。
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