るときは、隣人として看護の労をとること、たゞし、体温三十八度以下の風邪、又は単に頭痛腰痛み等にありては、必要に応じ、薬を調達するのみをもつて足れりとす
一、休業中と雖《いへど》も、金銭の支出は、毎月の予算を超過せざること、但し、炊事停止による丼物《どんぶりもの》の勘定は、この限りにあらず
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詩人  なるほど、可なり厳重ですね。しかし、僕がゐないものとして作られた規約なんだから、そこを少し改正して、なんとかならんこともありますまい。
夫  改正するとすれば、第二項に但し書を入れるんだが、双方異議はないかな。
妻  あたしの方は大いにあります。但し書によつて、この条項は全く死んでしまひます。行動の自由が全く保たれなくなります。
夫  それは止むを得んさ。われ/\は家庭以外に、束縛をいくらもうけてゐる。一方が下宿人の世話をすれば、一方が会社へ勤めなけれやならん。その点|寧《むし》ろ、現行規約は不公平なくらゐだ。
妻  一旦決めたもんを、そのくらゐの理由で、変更するのは不賛成です。
詩人  よろしい
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