か、蜘蛛がまた巣をかけたわ、あたしの頭の上へ……。
女郎花  (これも頭に手をやつて)あら、あたしの頭へも……。
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       第三場

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舞台は前に同じ。
翌朝――
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芒  あの婆やさん、さつきから、うろうろ歩きまわつて、一体、何を探してゐるの。
桔梗  昔の恋人の名でも落したんぢやない。
芒  え?
桔梗  いいえ、なんでもないの。
芒  またきたわ。

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(老婆現る。不安な様子)
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女郎花  婆やさん、なにを探してらつしやるんですの。
老婆  (その声が聞えぬらしく、あたりをきよろきよろ見廻しながら)お嬢さま……お嬢さま……。
桔梗  お嬢さんが見えないんですか。
老婆  (それに頓着なく、一層声を張り上げて)お嬢さま、何処にいらつしやるんです、か……。(一段声を落して)ほんとに、この婆やを心配させないでくださいまし……。ちよつと眼をはなしてるひまに、どこへいらしつ
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