秋の対話
岸田國士
−−
【テキスト中に現れる記号について】
[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
(例)[#ここから5字下げ]
−−
[#ここから5字下げ]
桔梗
芒
女郎花
こうろぎ
風
蛇
少女
老婆
高原――別荘の前庭――秋
遠景は、澄み渡つた空に、濃淡色とりどりの山の姿。
舞台中央に白樺の幹が二本並んでゐる。その根もとに雑草の茂み。
[#ここで字下げ終わり]
[#改ページ]
第一場
[#ここから5字下げ]
朝――小鳥の啼き声が聞える。桔梗と女郎花と芒とが、それぞれ異なつたポーズをもつて白樺の根もとに寄り添つてゐる。桔梗は十八九、女郎花は十六七、芒は二十一二の少女――何れも、その花の感じに応はしい服装。
[#ここで字下げ終わり]
[#ここから改行天付き、折り返して1字下げ]
桔梗 でも、どうしてお嬢さんだけ残つてらつしやるんでせう。婆やさんと二人つきりぢや、随分淋しいわね。
芒 婆やさんが、三人分ぐらゐしやべるからかまはないんでせう。
女郎花 あら、だつて、昨夜から今朝にかけて、婆やさんの声は聞えないぢやないの。
芒 それや、
次へ
全14ページ中1ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
岸田 国士 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング