秋の対話
岸田國士

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桔梗

女郎花
こうろぎ


少女
老婆

高原――別荘の前庭――秋
遠景は、澄み渡つた空に、濃淡色とりどりの山の姿。
舞台中央に白樺の幹が二本並んでゐる。その根もとに雑草の茂み。
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       第一場

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朝――小鳥の啼き声が聞える。桔梗と女郎花と芒とが、それぞれ異なつたポーズをもつて白樺の根もとに寄り添つてゐる。桔梗は十八九、女郎花は十六七、芒は二十一二の少女――何れも、その花の感じに応はしい服装。
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桔梗  でも、どうしてお嬢さんだけ残つてらつしやるんでせう。婆やさんと二人つきりぢや、随分淋しいわね。
芒  婆やさんが、三人分ぐらゐしやべるからかまはないんでせう。
女郎花  あら、だつて、昨夜から今朝にかけて、婆やさんの声は聞えないぢやないの。
芒  それや、
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