はどうだ。やあ、欠伸をしたぞ。
女郎花  まだ睡むさうだわ。
芒  あの眼のこすり方……可愛いわね。
桔梗  顔色が悪かない、今朝は……。
女郎花  ここへ来た時よりずつと痩せたわ。
芒  何してるの、両手を差出して……。
女郎花  (けたたましく)あ、どうしたの。
桔梗  倒れたんぢやない。
女郎花  (おろおろ声にて)さうよ、さうよ、きつとさうよ。
[#ここで字下げ終わり]


       第二場

[#ここから5字下げ]
舞台は前に同じ。
真夜中――星が輝いてゐる。

桔梗と芒と女郎花は、それぞれ草の根を枕に、すやすや眠つてゐる。

慌ただしく風が飛んで来る。芒が先づ驚いて眼を覚す。
[#ここで字下げ終わり]

[#ここから改行天付き、折り返して1字下げ]
芒  いやね、折角寝ついたところを……。
風  さう、まあ、怒るなよ。
芒  もつと静かに通つたら……。
風  せいぜい静かにしてるんだよ。
芒  どつちから来たの。
風  北から……。
芒  おお寒む。(襟をかき合はす)
風  今、すぐ行くよ。(といつて行きかけるが桔梗の足にけつまづく)
桔梗  いたいツ。だあれ、そこにゐ
前へ 次へ
全14ページ中5ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
岸田 国士 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング