るのは……。
風  やかましいなあ。
女郎花  (これも眼をさまし)また風、今夜は、とても眠れやしないわ。
風  そんなこといはずに眠つてくれよ。(大急ぎで走り去る)
芒  (耳を澄まし)しいツ……聞えない、あの話声……。

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(みんな耳をすます)
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少女の声  (微に)どうして、そんなに毎晩来るの……。何か、あたしに用があるの……。さ、帰つて頂戴……。いやね、そんなに黙つてちや……。あたしは、それや、あんたが好きだつていつたけれど、あたしの部屋なんかへ来ちや困るわ。帰らなけれや、婆やを呼んでよ。さうら、婆やを呼んぢやいやでせう。さ、お帰んなさい。早くさ……。

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(長い沈黙)
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芒  やつぱり、ほんとね。
桔梗  だけど、追ひ返されてるぢやないの。
女郎花  いい気味だ。

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(間)
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芒  (また耳をそば
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