あたしたちの知つたことぢやあるまいし……。それより、早くおつくりをしませうよ。露が消えちまうわよ。
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(めいめい、懐中鏡を取り出して化粧をしはじめる)
[#ここで字下げ終わり]
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桔梗 もう、あたしの着物もはげて来たわ。
女郎花 あたしを御覧なさい、こんなに顔が荒れちまつて……。(こうろぎがぴよんぴよん跳ねながら現れる)
こうろぎ よう、みなさん、おめかしだね。
女郎花 あら、こうろぎ[#「こうろぎ」に傍点]さん、早いのね……。昨夜はどうだつた?
こうろぎ 昨夜は、蟷螂の奴に出くわして、命からがら縁の下へ逃げ込んだよ。
女郎花 さうぢやないのよ、あの話よ、北の窓口の一件よ。
こうろぎ ああ、あれね。あれはあれきりよ。だが、やつぱり話声は聞えたさ。かういつてたぜ――そこから中へはひつちやいやよ。そこにさうしてるのよ。あんたはどこへでも登れるのねえつて……。奴さん窓からはひらうとしたんだね。
女郎花 まあ、図々しい。
桔梗 ちよいと、お嬢さんが起きて来たわ。
芒 窓を開けたわ。
こうろぎ あの髪の毛
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