次第、歩哨は容赦なくぶつ放す。盗人は袋をかついだまゝ倒れる。すると、何処からか数人の人影がばらばらと現はれ、その袋の奪ひ合ひがはじまるのださうである。
一つの塩の山が崩されつゝある。恰度蟻がたかつたやうに苦力がうようよしてゐる。袋を二つづゝ肩にのせて検査所まで運ぶ。そこからはトロッコで桟橋の上を船まで押して行くのであるが、これは若い女の仕事である。
トロッコが通ると桟橋の上に白い筋が残る。そのこぼれた塩をねらつてゐるものがある。看守が見張つてゐてなかなか近づけない。
美しい結晶体の岩塩である。色のどす黒いのもあるが、大きな塊になると拳ぐらゐのがあつて、舐めてみるとちつともあくがない。支那人は海の塩よりこの方を珍重するといふことである。
さて、そこの巡視を終つて、一行はまた船に乗り込んだ。瓜州といふところからいよいよ隋の煬帝が作らせたのだといふ世界第一の運河にさしかゝる。幅は百米から二百米ぐらゐの大クリークである。堤防の上を曳き船の綱を肩にして、前こゞみにゆるゆると歩く人々の姿も長閑であるが、なによりも、この満々たる水の流れの静かさ! 一望千里の平野を点々と綴る楊柳の刷毛で塗つた
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