やうな薄縁が、澄み渡つた秋空の下で、なんとも云へぬやわらかさである。そのなかでふと眼にはひる朱色の廟の、物語めいて現実感のうすいのもこゝでは私の眼のせいばかりではあるまい。この水の上では、人は世紀を越えて生き、現在を過去として夢みることができるのではないかと思はれる。
 船が三叉江といふところで止る。有名なお寺を見物するためである。
 岸へあがると、すぐに門がある。「高旻禅寺」と壁に書いてある。別にどこがどう立派といふやうな構へでもなく、古びた本堂のなかで、百人ばかりの禅僧が一斉に読経の最中であつた。けばけばしい色彩はなにひとつない、ガランとした薄暗がりをすかしてみると、鈍色の揃ひの衣裳をつけた僧侶たちが、瞑目合掌したまゝ、われわれのはひつて行つたのを気づかぬ風で、朗々と底力のある声を張りあげてゐる。
 老若の違ひこそあれ、いづれも、しつかりした顔つきの人物ばかりで、私はちよつと意外だつた。ひとかどの高僧と思はれるやうな悟りすました和尚もゐるにはゐるが、特に目についたのは、筋骨逞しく精悍の気の眉宇にあふれた入道であつて、文覚や蓮生坊を髣髴させる連中であつた。まことに生きた五百羅漢である
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