面もちで応へる。二人は、それだけで、この共通の大きな損失について同じ感情を解し合ふ如くであつた。
 十二※[#「土へん+于」、第4水準2−4−61]の港へ着く。
 数百万貫といふ塩の袋がうづ高く岸の広場に積んで並べてある。壮観ともいふべきこれら小山の連続は、ところどころ黒焦げになり、敵が退却に際して焼き払はうとした跡が歴然としてゐる。
 この町は塩で生活してゐる町なのだが、今は、塩を売買するものがゐなくなり、それを運搬する苦力だけが残つてゐるのである。もちろん、この物資は敵産として目下処分されつゝあるのである。今考へると、この塩の停滞が中支一帯に最近の塩饑饉を現出したものであらう。現に、私の知つてゐる限りでも、九江附近の農民は、一握りの塩を得るために豚数頭を提供して惜まないといふ状態であつた。
 しかし、もう、この塩が日本軍の手によつて地方にばら撒かれる段取りがついてゐるとのことである。
 この土地の守備隊で話をきくと、一般住民の塩にたいする執着は怖しいほどで、雨が降ると、いち早く集積場の周囲へ流れ出る塩水をしやくひにやつて来る。また、歩哨の眼を掠めて塩の袋を盗み出すものがある。見つけ
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