てゐたのか?」
 捕虜は、この問ひに答へて、
「もう逃げられないと思つたから」
「日本軍はそんなにこはいと思つてゐたのか」
「かねがねさういふ噂を聞いてゐたし、自分は日本のことをなんにも識らなかつたから、なほどうしていゝかわからなかつた」
「匿した銃を自分で持つて来たといふ以上、お前はやはり日本軍に抵抗するつもりだつたのだらう?」
「いや、あの銃は一緒に逃げた兵隊が、クリークの中へ投げ込んで行つたのを見てゐたから、それを拾ひあげたまでだ」
「さうではなからう。そんなら、どうして軍隊手牒を首にさげてゐたのだ?」
「あれは、たゞ自分の隠れてゐた場所に落ちてゐたのを、自分のにされてしまつたのだ」
 すると、そばで今まで黙つて立つてゐたもう一人の通訳が、この男の家は阿片を商売にしてゐるのだと私に囁いた。その言葉に私は心でうなづいた。ある病的な、朦朧としたところをその男のすべてに感じてゐたからである。
 この問答をさつきから聴いてゐた小川部隊長は、その時、老婆に向つてはじめて声をかけた。
「これはお前の孫かも知れんが、きつとお前を大事にしない孫だらう。平生の心掛けもわるいにきまつてゐる。とにかく
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