は通訳を顧みて、
「どういふことを云ひたいのか、よく聴いてやつてみたまへ」
すると、かういふことが云ひたかつたのである。
「あれは私のたつた一人の孫で、両親もゐないし、平生手許において可愛がつてゐたものだが、軍隊には全く関係がないのだ。たゞ間違つて捕へられたのだから、どうか赦してやつてくれ。見れば服は濡れて、寒さにふるへてゐる。せめて着物を着かへさせてやりたい。あゝしてほうつておくと、それだけで死んでしまふだろう」
それを聞くには聞いたが、私は、なにも意見を云ふ資格はない。
そのうちに橋梁破壊を命ぜられた部隊が、作業を終つたといふ報告があり、小川部隊長は、更に隊長に向つて、破壊の程度をたしかめた。
「いかん。橋脚と橋礎をすつかり取り外さなければなんにもならん。苦力を集めてもつと徹底的にやれ。兵隊はもう疲れてゐるから、たゞ監視だけでよろしい」
部落の中央のクリークに架かつてゐるあの大きな橋のことであらう。
これはどうして大変な作業であると思ひながら、私ものこのこ現場へ出掛けて行つた。
両岸の橋の附け根――即ち橋礎は、堅固に煉瓦を積み上げた本格的の工事で、巾四米、長さ二十米、木
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