しきれぬ様子であつた。
 昼食の支度ができ、われわれはまたアンペラの上に坐つて炊きたての飯を頬張つた。茹で卵などもできてゐて、なかなかの機敏さである。
 私はかうしてゐる間にも、支那軍がなぜ逆襲をして来ないのか不思議に思はれた。もちろんこつちにも備へはあり、部落の外側は警戒を厳にしてあるのだが、軍隊の士気といふものはまた格別で、ほんたうに旗を捲いて逃げたら、さう易々と出直して来られるものではないのであらう。
 さつきから、桂班長がぷりぷり怒つてゐる。
「じつにうるさい婆だ。あの捕虜の一人を自分の孫だから助けてくれと云ふのですが、そらその婆ですよ、またなにか愚図々々云ひに来た」
 なるほど、一人の老婆が、入口に跪いて、手を合はせて拝みながら、しきりになにやら訴へてゐる。親が出て来たら赦すといふ掟はないのだから、この応対は誰にだつて満足にできる筈がない。流石の桂氏もこの婆さんを黙らせるか、自分で耳を塞ぐかするより手はないと見える。ところで、班長に手ごたへなしと見てか、婆さんは今度は、そのへんにゐる誰彼れを問はず、そつちへ顔を向けたものをつかまへて、泣訴哀願しはじめた。あまりよく喋るので、私
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