し、中らない。かうして生きてゐる。まつたく不思議なものです」
 丁度そこへ、五又港の敵を撃ちすくめておいて、斎藤隊が主力をもつて引上げて来た。
「まあ、こゝで一服やり給へ」
 と、小川隊長は、斎藤隊長の報告を聴いた後、そこへ敷いたアンペラの一隅に席を設けさせ、さて、今日の戦闘指揮についての情理をつくした講評をしはじめた。
 私は、そこでその場を外すことにし、さつきの捕虜はどうしたかと思ひ、家の裏手に出てみると、敷石の角に二人とも尻をついて、ぼんやり考へ込んでゐるところであつた。
 よくみると、一方はなるほどがつしりしたところがあるけれども、もう一方は、ひ弱さうな、体格劣等の若者である。どつちも服はびしよびしよに濡れ、殊に体格劣等の方は、唇を真つ青にして肩をふるはせてゐる。
 言葉が通じるとしたら、私は、今、この捕虜たちに向つて何を云つたであらう?
 およそ憐憫とか同情とかいふ感情が、この場ほど当てにならぬことはない。人間の本性が如何に強くても、戦場の生理は動くところへ動いて行かねばならぬ。文明とか、野蛮とかいふ言葉がうかつに使へない、どぎつく且つ微妙な秩序が、既におのづから戦ふものゝ精
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