いてゐることにはじめて気がつく。
 私はしばらくそこに立ち止つた。うらゝかな秋の日ざしに蘇る田園の風景が、常にも増して心に沁みる。なぜかこの時、我が家の庭の木犀の香ひを想ひだした。
 やがて、小川部隊長を先頭に、本部の一隊がこつちへ帰つて来るのがみえる。私は、思はずそつちへ歩きだした。何よりも隊長以下の無事をよろこぶ気もちであつた。その時隊長に向つて私はなんと云つたか、今は記憶にない。たゞ、こつちの損害はどれくらゐであつたかを訊ねたことだけはたしかである。
「一人やられたきりです。あゝ、さう云へば内田軍曹はもう駄目だらうな」
 と、小川部隊長は傍らの誰かに云つた。
 誰も返事をしない。で、私は、
「腸を外れてゐさへすればいゝんだが……」
 と、ひとりごとを云つてしまつた。
「今日は案外手間どりました。おまけに、はじめと少し計画を変へたもんだから、あなたをとんだ目に遭はせてしまつて……」
 隊長は笑ひをふくんで私を顧みた。
「いや、却つて得難い経験をしました。それにしても、弾丸はなかなか中らないもんですね」
「さうでせう、敵は狙つてなんぞ射つてはゐません。だから、弾丸がみんな高い。馬に乗
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