、余念なく種を蒔いてゐるのである。
 これこそは、まさしく、神秘な風景である。如何なる分析もこの厳粛な魂のすがたを説明するわけにはいかぬと思ふ。これはたゞ、ひとつの単純な事実に違ひないけれども、私を深い瞑想に誘ひ込んだ。
 銃声がはたと止んだ。なんの意味かわからぬけれども、私は前へ出なければならぬといふ気がした。
「鉄兜をおかぶりになりますか?」
 今井君の声がうしろでする。
 さう云へば、妙なもので、今まで弾丸のうなりを聞きながら、こいつがあたるとすれば、いつたいおれのからだの何処へあたるだらうといふことだけが気がゝりであつた。そして、頭さへやられなければといふ考へが、ぼんやりしてゐた。
 鉄兜を受けとつて、被り方を教はりながらそいつを頭へのせると、どうしてこれは相当に重いものである。子供の時分、祖父の家で悪戯に古い冑をかぶつてみた、あの記憶がふとよみがへり、をかしくなつた。と、その時また、左手の方から銃声が聞え、気のせゐか弾丸が近くなりだしたやうに思つたので、狙撃されてゐるなと、心の中で感じながら、私は夢中で駈け出した。
 そこはやはり人家が二三軒ひと塊りになり、すぐその向うを幅二
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