尤も、生れながら虚弱な体質の子供が多いんでせうからね」
 と、私は慰めておいた。

 九江の街は日に日に面目をあらためて行つた。日本人の店が次ぎ次ぎに出来る。主に飲食店であるが、それはまづ順序としてさうであらう。
 難民区を訪れると、その度毎に活気を呈し、道傍で商ふ雑多な品物の数も質も豊富になつて行くのが目立つ。誰が何処から集めて来るのかと思ふ。彼等は、どんな場所でも、その置かれた場所に根をおろすと云はれてゐるが、さういふ力がこゝでもひしひしと私に感じられたのである。
 ある日、××××でまだ届出をしてゐない支那人の調査をした。ぶらりとこの街へ入り込んで来て勝手にそこ此処へ尻を落ちつけてゐる連中を一斉に掻き集めた。事務所の前庭は忽ち浮浪者の海と化したが、老人と子供が多いことは云ふまでもない。×××の訓示があるといふので、係りのものが彼等を適当な位置に纏めようと骨を折つてゐる。支那人の世話役が声を張りあげる。これがどうして大へんな仕事である。袖を引つぱつたり、肩を小突いたりするくらゐでは追つゝかない。動かうとしない奴は足で蹴る。さうなると、物騒な空気が漲つて来る。何処にゐたら安全なのか、
前へ 次へ
全159ページ中32ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
岸田 国士 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング