殊に意外だつたのは、その日私を迎へた週番大尉が、以前私の中隊にゐた一軍曹のMであつたことで、それがまた現に米良の大隊の中隊長なのである。
 私事に亙るやうであるが、私は、自分の経験した軍隊生活なるものと、今度の文学者としての従軍とを、まつたく切り離して考へる事はできないので、この日の連隊訪問はある意味で戦跡視察の延長のやうなものである。
 久々で旧友米良に会つた感想は、しかし、こゝでは述べる必要はあるまい。但し、彼が予備少佐として、戸畑高等専門学校の剣道師範として、そして今また、元の連隊の大隊長として昔ながらの風格と生活ぶりをみせてゐることは実に面白い。私は、かねて啓蒙的な「軍人論」なるものを誰かゞ書かねばならぬと思つてゐる。日本の一般社会は、日本の軍人、つまり、本職の将校が如何に「育てられ」つゝあるかといふことをあまりにも知らなさすぎるのである。
 東京へ帰つてみると、街の印象がなにひとつ変つてゐないので安心した。みなわりに朗らかで落ちついてゐる。こんなことではいかんと云ふやうな現象は、表面的にはなにも目にとまらない。戦場に行けば戦場にゐる気分、内地にゐれば内地にゐる気分と云ふのが
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