る。右側の帳場は西洋のホテルとおなじになつてゐて、支配人がボーイに部屋の番号を云ふ。
ホールの天井は三階まで筒抜けで、各階の廊下が四方を取囲んでゐる形である。部屋から廊下へ出ると下のホールがまる見えだから出入りする人物がいちいちわかる。
ところで、このホールは、まつたく街頭の延長のやうなものだといふことは、そこへなら物売りでも乞食でも勝手次第にはひつて来られるらしい。小娘を連れた流しの唄うたひも、そこで一曲演じてみせる。この旅客相手の門づけは絶えず上眼をつかつてゐる。天井から落ちて来るものを見逃さないためである。
若い男女の一組が、二階の手摺に臂をついて楊州小唄の哀調に聴き入つてゐる風景は、いかにもわれわれの想像の一隅に生きてゐる支那気分で、無作法なボーイのサーヴィスも全体の雰囲気からみれば一向苦にならぬ。それどころか、慣れるにつれて、簡便で、暢気でざつくばらんで、こんな居心地のいゝホテルは世界中にないと思ひだした。が、この感じは結局人さまざまで、ある人から見れば、不便で、横着で、だらしがないと云ふことになるのであらう。
私は、そこを根城に、市中を歩き廻り、時々本部に顔を出し、
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