も、このさつぱりしないところを頬かぶりで通つてはいけないのだと思ふ。国民は今、何故に支那がかくまで欧米に依存し、われを疎んずる挙に出でたかを、とことんまで突きつめて考へてみなくてはならない時機である。
政府当局も亦「国策の線に沿つて」この一点を十分に事変処理のプログラムのなかに具現し、第一に支那自身を、第二に、国民を将来の杞憂から解放することが目下の急務である。
維新政府対外人宣教師の問題でも、かういふ常識の上に立つて事が進められつゝあると見ていゝかどうか、私は国民の一人として黙過できないのである。
思はず脱線してしまつたが、以上の感想は別にこの楊州地区に於ける外人宣教師の現状に基いて云々したわけではない。特に断つておく。
緑楊旅社
本部指定の支那旅館に部屋をとつて貰ふ。日本で編まれた案内記によると、楊州の旅館の一般に不潔極まることを吹聴してあるが、この緑楊旅社は、流石に御用宿舎だけあつてそんなにひどくない。南京虫は覚悟の前であつたけれども、それさへ私の泊つた間には顔をみせなかつた。
正面入口をはひると、広い土間のホールがあり、これが、衝立で奥の食堂と仕切つてあ
前へ
次へ
全159ページ中124ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
岸田 国士 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング