、私に是非何か感想を述べよといふので、止むを得ず私は、
「警察は軍隊ではありません、警官は敵を倒すのが任務ではなく、民衆の生活に秩序を与へ……」
と、まあこんな風なお座なりな警察礼讃をひとくさりやつてのけた。
郷に入つては郷に従へとは云ふけれども、私は、自分ながら、この即興的辞令があまりにも支那式であるのに気がつき、冷汗をかいた。
が、この時、ふと、この局長の帽子を脱いだ頭に、深い創痕が生々しく口を開いてゐるのを、あゝ、この人だなと思ひ出し、私は、突嗟に、通訳をとほして、
「先日は危険な目にお遭ひになつたさうですが、お怪我は如何です?」
と、見舞を述べた。
「はあ、ありがたう、この通り、もうよほどよくなりました」
といふ返事であつた。
つい一と月ほど前のことださうである。この局長が県公署の玄関を出て通りへさしかゝると、何者かゞ、乗つてゐる洋車の梶棒を押へた。と、その瞬間、後ろから鉈のやうなもので脳天をガンとやられたのである。
犯人はその場から姿を消してゐた。
憲兵隊の活動となつた。しばらく手がゝりは得られなかつた。ところが、ある日、一人の男が憲兵隊へ現はれて、犯人はこれ
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