が袖に拳銃をひそませ、巧みに両手を挙げながら検査官の前に立つことがある。
「かうして毎日歩哨に立つてると、なかには顔なじみになつて、にこにこ笑ひながら挨拶をして行くやつがゐますよ。だんだん内地にゐるやうな気がして来ます」
 歩哨の一人は私にさう述懐した。
 楊州の町はかく平穏にみえるけれども、数里を隔てた周囲一面にはまだ残敵が蟠居してゐて、そのために楊州政府はなかなか県公署としての機能運転が覚束ない。収税が思ふやうにいかないからである。地方の治安と経済の関係について私は迂闊ながらはじめて現実の知識を得たわけである。
 そこで地方自治の母体たる民衆の結束がどういふ形で進められつゝあるかを知ることができたらと思つた。
 と、折よく「大民会」の発会式といふのが行はれ、私もその式に列席する機会を得たが、この日のプログラムは大体に於て現在の政治的段階を語るものであり、所謂「民意」の反映は稀薄といふほかはなかつたけれども、ともかく会衆は堂に満ち、市民の中堅層を網羅してゐるらしいことが察せられた。
 役員の宣言朗読や、会長の挨拶などに次いで、県当局並に日本軍幹部の祝辞が述べられる間、彼等は静粛に耳を
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