は雑沓を極めてゐる。中支一帯の都市を通じて、この程度に事変色を反映してゐないところは絶無であらうといふ印象を受けた。
 ところが、いろいろ話を聞いてみると、なるほど此処に駐屯してゐた支那軍は、日本軍の攻撃に先だつて、易々と撤退したことは事実であるが、それでも、敵軍来の声に怯えて住民の大部は一時影をひそめてゐたらしい。それが、この通り続々と帰還した事情は、まつたくこの地を警備する日本軍の宣撫よろしきを得た結果であつて、特に最近の状態は、もはや若干の旧国民党系官吏並に有産階級を除いて、殆ど市民の全部が事変前の生活を取戻してゐるといふことである。
 城門の一つに配置された衛兵所の傍らに佇んで、そこを出入する民衆の一人々々が所持品を調べられてゐる有様を見てゐると、実に旺んなものだといふ気がする。
 何処へ運びだし、何処から運び入れるのか知らないけれども、手に手に大小の荷物をさげた老若男女が、押すな押すなで城門に殺到する。第一に武器を秘してゐるものはないかである。第二に脱税の見張りである。日本の歩哨と支那の保安隊員がこの検査に当つてゐるのだが、見てゐても眼のまはる忙しさだ。
 時たま、怪しげな男
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