、一対の回向料を差出す。
船まで送つて来た若僧は、一同の武運長久を祈つてくれた。
こゝから、運河は二つに分れる。匪賊の最も横行する場所とのこと、乗組の護衛兵は一層警戒の眼を厳にする。
かういふ風にして天津まで行くのに幾日かゝるだらうとみなで笑ひながら話す。発動汽船ならレコードがつくれるだらうと誰かゞ云ふ。そんな暢気なことを喋つてゐる場所は、つひこの間、わが輸送部隊の襲撃されたところである。しばらくして、船がまた速力を緩める。
甲板に出てみると、岸に近く二階建の家屋があり、そこを中心に民家が左右に軒をつらね、運河に沿つた小部落を形づくつてゐる。
そして、その二階家は、土嚢の陣地をもつて囲まれ、入口に到る一側に若い将校を長とする一小部隊が二列横隊に整列して、部隊長の来着を待ち構へてゐるのである。
大熊部隊長は徐ろに起ち上り、
「あゝこれが○○守備隊だな」
と、部下の労苦をまづ感じ取る。
「気をつけ!」
守備隊長は、感激にふるへる一声、続いて、兵士が二人、素早く踏み板を提げ、甲板と岸とをつなぐ。
大熊部隊長は、小川部隊長以下を従へて閲兵のため上陸する。私は甲板に残つてゐた。
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