「捧げ銃!」
の号令で、私はふと、これらの将兵の眼を見た。そして、ぐつと胸がつまつた。彼等の眼はいづれも涙に光つてゐる。いや、もう既に泣いてゐるものすらある。部隊長の手許をはなれて数ヶ月、この僻陬の一部落に屯し、日夜敵襲に備へ、住民の向背に気を配り、偵察と連絡と給養と、その何れにも難を冒し、死を賭けてゐるのである。
部隊長のたまさかの巡視は、信頼につながる上下の心を無言の凝視の間に読み合ふ瞬間なのである。
この厳粛で、しかも感傷に満ちた光景は永く私の記憶を去らないであらう。
再び部隊長をのせた船が滑り出すと、送るもの、送られるもの、互に万感をこめて礼を交す。大熊部隊長の大きく挙げた答礼の挙手がいつまでもおろされない。すると、その手が心もちふるへて来た。私は急いで眼を転じた。岸に立ち並ぶ人家の前には、それぞれ住民たちが出てゐて、あるものは日の丸の旗を振り、あるものは帽子を脱いで頭をさげ、部隊長に敬意を表してゐるのだとわかつた。予めさういふ命令が出てゐるのであらうけれども、かういふ躾けの効果は私にはなんとも判断がつかぬ。恐らく、支那の無知識階級に対しては、これがなんらかの政治的指
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