いのである。
 私の観た範囲に於て、現在のわれわれの力の程度に於て、せめてこれだけのことはしなければならぬと思つたことを思ひつくまゝに列挙してみる。

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一、大学専門学校男女卒業生中、優秀な希望者を日本語教師として支那各地の中・小学校に配属せしめること。そのために、教授法の講習を若干行ふこと。少くとも十年以上の契約を結ぶべきこと。
一、支那人のための日本語教科書を速かに編纂発行すること。
一、直接日本政府の名によらない私立の小・中学校を各地方の治安の程度によつて徐々に設立すること。これがために、その経営、スタフ等を半官半民の機関によつて統一的に研究指導すること。
一、各地方に日支民間の協力による刊行物の普及を計ること。勿論、飽くまでも日本当局の許可と支持を必要とするものであるけれども、この形式は、事変の性質からみて、国策遂行上、最も効果的だと信じる。これら刊行物は最初は漢字版のみによるのであるが、将来、日支両文の記事を同時に掲載することになるであらう。
一、ある地区では、相当の都会に(人口十万ぐらゐの)医者と云へるやうな医者が二人しかをらず、他
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