るためであることを私は彼等のために弁ずるものである。
 日本は今、知識階級の奮起によつて、事変第二段の事業を達成すべき時期にはひつてゐる。彼等の総力は何人の手によつて動員されるか、それを思ふと私の心は暗くならざるを得ぬ。
 内に正しい文化を推進する力なくして、外にこれを伸ばさうとしても、それは労して効なきわざである。
 希くは、われらと憂ひを共にする若い官吏諸君は、この機会に、職を賭して上司の蒙を啓くことに努力されたい。ジャアナリズムは、その全能をあげて知識層と一般大衆の結合を企図して欲しい。
 軍民協力の実がこれほど挙つてゐるのに、なほ、社会のそれぞれの部門が、背を向け合ひ、時として反撥し、功を競ひ、他を傷つけ、「日本の理想」が何処にあるかを疑はしめるやうな現象が国内に存在することは、かへすがへすも遺憾である。

     直ちになし得ること二三

 そこで、国内改革の急務を察しなければならぬが、その完成は短時日に俟つわけにはいかぬ。われわれは、今日直ちに、支那をどうかしたいのである。支那の民衆と手を握りたいのである。彼地に於て、日本の信頼すべき姿を――少くともその真意において示した
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