青春は、おのづから輝きを失ひ、夢はいたづらにさびしいのである。
第三に「女のたしなみ」のうち、わけてもこれからの女性が身につけなければならないのは、家庭の雑用と呼ばれてゐる細々とした仕事を、最も能率的に処理し、しかも、それが目的ではなく、より大きな目的を達するための手段であるといふ、云はゞ綽々たる余裕を保つ技術的錬磨である。
こゝで注意しなければならないのは、この「目的ではない」といふ意味についてである。それは、機械の整備運転が、そのこと自身、例へば生産活動の領域に於て、純然たる目的とは云ひ難いといふのと同様である。しかし、それは、手段としては絶対なものであり、それなくして生産はあり得ないやうな重大性をもつものである。
更に、考ふべきは、家事といふことのなかに、出産、育児を含むことである。これは、もはや「目的」と云つてもいゝほどの、大多数の女性にとつて、一種神聖な最後的役割である。
「子供にかまける」毎の、扮《な》り振《ふ》りかまはぬ姿こそ、清く尊いものと云へば云へるであらう。だが、こゝに、私は日本人の不思議な凝結心理をみて、聊か疑問を抱く。いくらあつても足りぬ時間といふのはわか
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