もつて今日から準備することができると信じます。

       四

 翼賛運動はいふまでもなく一つの国民運動であります。さうしてこの国民の翼賛運動に対して芸術家はどういふ風に協力しなければならないかといふ点を考へてみますと、この協力は、浅薄な考へ方によつてなされるときには、かへつて日本の文化の将来のために、非常な危機をもたらすやうな結果にもなると思ひます。目先のことに捉はれた時局便乗的な態度で安易に満足するのではなく、決然たる態度をもつて今日の国難の根柢に処する道を考へると同時に、芸術家として或は芸術を守り育てる責務をもつものとして、悠々国民の血となり肉となる仕事をし続けねばなりませぬ。
 芸術関係者の、特に音楽関係者の新しい組織が必要であることは今さら申すまでもありませぬが、しかし形が出来ても魂がはひらぬといふことでは勿論困るのであります。
 今日まで芸術家は、個人主義とか自由主義とかいふやうな思想の側から、自分の考へ方や態度に対する厳しい自己批判を加へてまゐりました。また今後といへどもこの批判を失つてはならないことは申すまでもありませぬが、この思想的自己検討と同時に、特に芸術家と
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