芸術家の協力
――楽壇新体制に備へて――
岸田國士

       一

 翼賛会の文化部と致しましては、実は、現在の楽壇の実状を考へまして、直ちにこれをどうしようといふ風には考へてゐないのであります。申すまでもなく翼賛運動は国民自身の運動となるべき性質のものでありまして、芸術分野といふやうなものも抑々国民生活の中から生れ出たものであり、従つて国民生活の実際の動きからは離れることはできないものであります。特に音楽などは、今日までどういふ歴史の変遷がありましたにしても、結局国民が求め、国民自身が作り出して来たものでありまして、その時代時代の国民生活の中に生れ、よくその生活を反映してゐることは他の芸術以上ではないかと思はれます。現代の音楽に致しましても、また当然国民現在の生活そのまゝが反映されねばならないものと思ひます。
 現在の日本の文化といふものを考へてみますと、特にわれわれが遭遇してゐる今日の重大な時局を思ひ合はせてみますと、そこに甚だ心痛に堪へないものが多々あるやうに思はれます。私としてはすでに十数年来かやうな見解を懐いて来ましたが、特に今日のやうな時期に遭遇しますと、われわれはも
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