……こゝのおつ…………十二…………十五…………」
 二つの赤玉が親しげに寄り添つてゐる。
 一つが動けば、もう一つも、慌てゝからだをすりつける。
 寄つたはずみに、軽くキツス。
 手玉は、しつつこく、二人の肩を小突く。
 小突かれて、またキツス。
 白玉が、一つ離れて、向うの隅に、クツシヨンの陰に、ぼんやり蹲んでゐる。
 手玉が、それを呼びに行くと、拗ねて、くるりと、逆にまはる。
 手玉は、気を腐らして、ぶらぶらと道草を食ふ。やがて、途中で寝そべる。

「はい、お茶、よく出なくつて、どうも」
 湯上りのお神さん
 独り者にしては、はしやぎすぎるお神さん
「今日は如何です」
「…………」
「お当りですか」
 見ればわかる――と云はずに、
「お神さんは、一体いくつ……」
「へ?」

 押しクツシヨン
 ひねり込み
 縦返し、切り返し
 初キユー突つ切り
 当り残り
 一たて、二たて、三たて
 一あがり、二あがり、…………三さがり。
 ――裏は「初音」か、「ことぶき」か。

「××さん、こちらとお一つ……」
 こちらと云はれた無髯の大男
 やをら
 棒のしごき、あざやかに
「御免」――と
 
前へ 次へ
全7ページ中4ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
岸田 国士 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング