れとして、今度は専門学校以上に進むもののためにはどうするか、――これは前述の中等学校の教育法をそのまゝ適用していゝかどうかは疑問である。で、例へば上級学校にゆくための中等学校と然らざるものとを区別する――これは学制全体の改革に属する問題だが――のも一つのゆき方だと思ふ。さらに上級学校で外国語を習得する場合、従来と根本的にやり方を違へなければならない点がある。即ち、これまでは話すことと読むことと書くこととが、全然目的を異にするかの如くバラバラに教へられてゐた。例へば、会話のための英語だとか、或ひはたゞ本を読むための英語だとか、要するに非常に偏した外国語の身につけ方を、ほとんど総べてのものがやつてゐたといふことである。
 殊に大学なんかでは、専門の書物が読めればいゝといふふうに一般に考へられてゐた。また、書くことにしても、専門的な論文が書ければいゝ――実は専門的な論文は一般に非常にやさしいものだとされてゐるが――とされてゐた。したがつて、さういふふうな外国語の身に付け方をした人には、話すといふことはまつたく専門外のことであるのみならず、会話などはできなくても別に何の不便も感じない。むしろ、
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