ね、序だから、舞妓の踊りでも見せてと思ふんだが、お前、ひとつ、人選をしてくれんか。あゝ、何時もの処でよろしい。十人ばかり……。もう二十分ほどして出掛けるから、お前先へ行つてゝくれ。よし、わかつた。
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Cの電話室では、少年がぼんやり受話器を耳に当てゝゐるが、しまひにそのまゝ居眠りをしはじめる。
主人らしい男がはひつて来て、少年を突きのけ、受話器を耳に当てる。
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主人 もし、もし、どなたさまでおまつしやろ?
男甲 え? わしに相談……? そいつは弱つたな。この次ぎぢやいかんか。それやさうさ。無論、承知はしてゐるが、今度は勘弁してくれ。
主人 阿呆らし、あんた、だれや。えらい混線や。
男甲 さう、さう。ぢや、兎に角、わしが一と足先へ出掛けることにしよう。なに、かまはんよ。ぢや、さよなら……。
主人 さいなら……。おやすみ……。
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男甲、受話器をかける。
Cの電話室でも、主人が荒々しく受話器をかけて去る。
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