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長い沈黙。
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貢  これで、先生たちが、同時に、われわれから、非常に遠い処へ行つてしまふやうな気もするが、それと反対に、何時までも、この辺をうろうろしてゐて、なかなかわれわれの頭の中から消えて行きさうもないつていふやうな気もするんだ。
牧子  どつちにしても、あんまり……。
貢  うん。それや、まあ、どうでもいいさ。(間)おい、人が帰つて来たら、茶ぐらゐ飲ませろ。それから、此の間から云つてるぢやないか、此の電球をもつと大きいのと取り換へようつて……。
牧子  兄さまこそ、序に、買つて来て下さればいいんですわ(起ち上る)
貢  それがいけないんだ。自分で家の中をキチンとしようと思はなくつちや……。ねえ、もう少し、ここだつて、家らしくできるだらう。
牧子  お茶は、ただのでよろしいんですか。
貢  そんなことも、自分で考へろよ。
牧子  (出で去る)
貢  (頭を抱へる)

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長い間。
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貢  (何となく
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