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貢 僕の責任もないことはありません。だから、どうすればいいんです。僕の力で、それがどうかなるんですか。
より江 早く牧子さんを自由にしておあげになることですわ。
貢 自由に……? あいつは自由です。
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長い沈黙。
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より江 あたくし、かういふお話をしに来たんぢやありませんわね。
貢 いいえ、かまひません。僕に間違つたところがあつたら、云つて下さい。僕は、さつき、あんなことは云ひましたけれど、実際は、牧子のことを一ばん心配してゐるんです。あなたが自由にしてやれつておつしやる意味は、どういふ意味だかはつきりわかりませんが、あいつを幸福にしてやることなら、どんな犠牲でも払ふつもりでゐます。あいつが、今、どつかにいい口があつて、嫁入りでもするやうなことがあれば、僕は、勿論、自分の不自由ぐらゐは忍ぶつもりです。
より江 (笑ひながら)それは、あたり前ですわ。それは犠牲とは云へませんわ。
貢 ああ、さうですか。なる
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