んて、ゐますでせうか。
西原 女優つて云へば、牧子さん、一つ、女優になつてみませんか。
牧子 あたくしがですか。女優にですか。人が笑ひますわ。
西原 処が、笑ひません。なぜ笑はないかつて云へば、職業俳優には出来ない芝居をやるんです。僕たちは、今度、市民劇場つていふ遊動劇団をこしらへるんですよ。どうです、晩、七時から十時まで、暇はありませんか。
牧子 さあ……。でも、あたくし、舞台なんぞへ出たら、足がすくんぢまひますわ。
西原 さういふ役を振らうぢやありませんか。足のすくむ役を……(一同笑ふ)男はいくらもゐるが、女がゐないんでね。
貢 君は、どうして、あつちの女と結婚しなかつたの。
西原 どうしてつて、そんな無理なこと云つたつてしやうがないぢやないか。ねえ、牧子さん。
貢 さうかなあ。やつぱり、日本の女がいいかね。
西原 いや、さういふ意味ぢやなくね。しかし、今では、さう、云つとくよりほかあるまいね。
貢 君は、日本の女の、どういふ女がいい。
西原 さあ、そいつは、見てみないとわからん。
貢 見てみたうちでは、どんなのがよかつた。
西原 さういふつもりで見てみな
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