んて、ゐますでせうか。
西原  女優つて云へば、牧子さん、一つ、女優になつてみませんか。
牧子  あたくしがですか。女優にですか。人が笑ひますわ。
西原  処が、笑ひません。なぜ笑はないかつて云へば、職業俳優には出来ない芝居をやるんです。僕たちは、今度、市民劇場つていふ遊動劇団をこしらへるんですよ。どうです、晩、七時から十時まで、暇はありませんか。
牧子  さあ……。でも、あたくし、舞台なんぞへ出たら、足がすくんぢまひますわ。
西原  さういふ役を振らうぢやありませんか。足のすくむ役を……(一同笑ふ)男はいくらもゐるが、女がゐないんでね。
貢  君は、どうして、あつちの女と結婚しなかつたの。
西原  どうしてつて、そんな無理なこと云つたつてしやうがないぢやないか。ねえ、牧子さん。
貢  さうかなあ。やつぱり、日本の女がいいかね。
西原  いや、さういふ意味ぢやなくね。しかし、今では、さう、云つとくよりほかあるまいね。
貢  君は、日本の女の、どういふ女がいい。
西原  さあ、そいつは、見てみないとわからん。
貢  見てみたうちでは、どんなのがよかつた。
西原  さういふつもりで見てみな
前へ 次へ
全46ページ中20ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
岸田 国士 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング