る。)
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牧子  こんなもの、お口にあひますか、どうですか……。
西原  今日は、あの方、見えないんですか。
牧子  あ、より江さん……。さあ、もう見えるかも知れませんわ。日曜の午後は、たいがい、見えますから……。
貢  君に会つたら、いろんなことを云はうと思つてたんださうだ。
西原  だれ?
貢  いや、こいつがね。ところが、君の顔を見たら、なんだか、気おくれがして……。
牧子  あら、気おくれなんて、そんな……。
西原  僕はね、牧子さん、向うに行つてる間、何処へも手紙を出さなかつたんですが、一度だけ、あなたの処へ絵端書をあげようと思つたことがあるんですよ。思つただけぢや仕方がありませんが、それは、そん時、丁度切手を買ふ金がなかつたんですよ。その絵端書つていふのは、多分、今でも何処かへしまつてある筈ですから、此のつぎ、持つて来ます。
牧子  まあ、なんの絵端書でせう。
西原  あなたに似た女優の絵端書ですよ。(貢に)よく似てるんだよ。仏蘭西の女は、そんなに毛唐臭くないからね。
牧子  まあ、あたくしに似た女優な
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