貢 お送りしませうか。
より江 まだ大丈夫ですわ。ぢや、御免遊ばせ。また、いづれ近いうちにお邪魔させて頂きますわ。
牧子 そんなこと仰しやらないで、毎日、是非……。
より江 (笑ひながら)お兄さまのお留守の時を見はからつてね……。
貢 どうしてです。え、どうして……。
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(より江を送つて、貢、牧子、出づ)
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貢の声 さよなら。
より江の声 さよなら。
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(やがて、貢現る)
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貢 (あたりを見廻しながら)此の応接間も役に立つたね。(間)おい、牧子、一寸来て御覧(ポケツトから、色々の化粧品を取り出しながら)来て御覧つてば……。
牧子 (現れ)お腹が空いてらつしやるでせう。
貢 腹は空いてない。これ、どうだい。
牧子 (不審さうに貢のすることを見ながら)それ、なんですの、一体……。そんなもの、どうなさるおつもり……。
貢 おれがどうするわけもないぢやないか。お前に買つて来たんだ
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